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2020年に向けたリスク調整

Posted Nov 07, 2019

ポートフォリオの点検とリスク調整が必要な気がする。

直近数年間は、株式市場の上昇に賭けてきたのですが、個人的な感覚では、世界経済は下落か横ばい、最低でも成長が鈍化していくように思えてなりません。

現状のポートフォリオは、株式を中心にした構成になっており、景気の減速に伴って株価が横ばい、下落となれば、既存資産にも悪影響を受けることになります。

このような考えから、現状のポートフォリオを見直し、景気減速に備えて、リスクを調整しておこうという考えに至りました。

現在のポートフォリオ

まずは、現状の整理です。

今年の3月に書いた記事「2019年の投資」では、高配当(VYM)、IT(VGT)、債券(BND)をテーマに毎月積立を行っていることを書きましたが、これまでの積立により、11月上旬時点の構成比率は、以下のようになっています。資産の種類で言えば、株式73%、債券27%の比率になっており、かなり株式に偏った比率になっていることがわかります。

  • VGT:45%
  • VYM:28%
  • BND:27%

リスク調整の必要性

リーマンショック以降、株式市場は堅調に回復し、直近数年で史上最高値を更新する場面もありました。このような相場環境が続くのであれば、このまま株式を多めに保有し続けるのが正解かもしれません。

ただし、現在の構成比率のまま、もし株式市場が50%、債券市場が15%下落することがあれば、ポートフォリオ全体として約40%ほど資産が減ることになります。

リーマンショック級だと、さらに資産の減少は大きくなるでしょう。※株式市場の変動率=VYM,VGTの変動率、債券市場の変動率=BNDの変動率と仮定

私自身が、直近数年のような株価の右肩上がりを期待していない以上、今のままでは後々後悔しそうです。大きく資産を減らして公開しないためにも、ポートフォリオの構成を変更して、株価変動リスクを下げる必要がありそうです。

株価変動リスクの調整方法

ポートフォリオ全体に対する株価変動リスクは、株式への投資比率を下げ、株式以外への投資比率を高くすることで調整可能です。為替レートや物価変動を除けば、値動きのない現預金のみにしてしまえば、ほぼ無リスクになりますが、現預金で置いておいても増えません。あくまで現預金は、今回のポートフォリオには含めないものとして、考えていきます。

景気、相場については、現状よりも悲観的に見ていますが、テーマは高配当(VYM)、IT(VGT)、債券(BND)の3つから変えず、株式と債券の2種類の資産、3銘柄の構成比率を見直すことで、株式市場に対するリスクを調整していきたいと思います。

リスクパリティによる目標構成比率設定

私の相場に対する見通しについては、「下落か横ばい、最低でも成長の鈍化」と書きました。少なくとも、ここ数年のような上昇が続くとは思っていない、ただまぁ正直わからん、そんな気分なんです。

こんな気分のとき、構成比率をどのように決めるか。これが問題です。相場観と同様、構成比率の決め方は人それぞれです。インデックスにおいては、最重要かつ唯一の楽しみでは?と思わないこともありません。

今回はリスクを均等にするリスクパリティPFで決めていくことにします。

リスクパリティPFとは、ポートフォリオを構成する個別銘柄や資産毎の、ポートフォリオに対するリスク寄与度が等しくなるように構成比率を調整したポートフォリオです。リスクの高い銘柄や資産は構成比率を低く、リスクの低い銘柄や資産は構成比率を高くすることで、構成銘柄・資産のポートフォリオへのリスク影響度を均等に保ちます。

レイ・ダリオの全天候型(全季節型)ポートフォリオもこのリスクパリティの考え方に沿っていると言われています。

どの資産・銘柄がどれだけ下げるのか上げるのかもわからないので、全部同じ程度にリスクを取っておこう、そんな消極的な考え方が、自分の今の相場観に合っていると感じたので、この戦略を採用しました。

具体的なリスクパリティPF構築方法

各銘柄の構成比率の出し方を決めましたので、実際にリスクパリティPFを構築していきます。

1. 最終的なポートフォリオ総額といつまでに構築するかを決める。

今回のPFに最終的にどれくらいの規模にしたいのか、いつまでにそれを達成するのかを決めます。

例えば、NISAを使う場合、1年間で最大120万円の追加投資をすることになります。既存資産が500万円、12ヶ月で120万円追加するとすれば、一年後の総額は620万円になります。

私は、自分の相場観に自信がないので、新規投資でも構成比率の変更でも、基本的に3ヶ月から12ヶ月かけて動かしていくようにしています。相場感が間違っていても、期間を長く取れば、それだけ方針を転換できる余地が生まれます。

これを書いている2019/11/15時店でも、景気後退のリスクは小さい、という報道が出ていて、自分の相場観が間違っているかも、と恐怖しています。

2. Portfolio Visualizerで各銘柄の構成比率を算出する。

さて、PFの総額と構築期間を決めましたが、次はPFをどう構成するかを決めていきます。私の場合、自身の投資テーマ(高配当、IT、債券)に沿った3つのETFで、前述のリスクパリティ(リスク寄与度が均等)になるような比率を決めていきます。

「リスク寄与度」難しい言葉を書いていますが、実際に理論を勉強して、中身を理解する必要はありません。以下のサイトで簡単に出来ます。先人の知恵に頼りましょう。

PORTFOLIO VISUALIZER - Portfolio Optimization__https://www.portfoliovisualizer.com/optimize-portfolio

ポートフォリオ見える化(visualize)サービスです。英語のサイトですが、慣れれば操作は簡単です。この中のポートフォリオ最適化(Portfolio Optimization)機能を使います。

(1) 「Optimization Goal」で「Risk Parity」を選択(2) 「Portfolio Assets」に構成銘柄のTickerを入力(3) 「Optimize」をクリック

上記の手順で、計算結果が表示されると思います。

「Optimization Goal」を「Minimize Variance」にすれば最小分散ポートフォリオと「Maximize Sharpe Ratio」にすればシャープレシオ最大化ポートフォリオの比率を算出ることも出来ます。非常に簡単に使えて便利です。

Portfolio Allocations:構成比率

「Portfolio Allocations」では、「Portfolio Assets」で入力した銘柄の過去の値動きから、リスクパリティ(リスク寄与度が均等)になる各銘柄の構成比率が表示されています。

今回の3銘柄では、VYM 13.61%、VGT 11.40%、BND 74.99%の比率で組み合わせるとリスクパリティとなるようです。目論見通り、債券(BND)の比率が高く、株式(VYM、VGT)の比率は低くするべきようですね。

Portfolio Performance Summary:成績サマリ

「Portfolio Performance Summary」では、上記比率でポートフォリオを構築して、保有し続けた場合の成績が表示されています。様々な指標がありますが、私がよく見るのは「Expected Return」(期待リターン)、「Worst Year」(最低年間リターン)、「Max. Drawdown」(最大下落率)くらいです。

今回の最適化したポートフォリオを2007年12月から保有していた場合、期待リターン +5.9%、最低年間リターン -5.7%、最大下落率 -11.7%となりました。最大下落率が発生したのは、リーマンショックの期間でしょう。2008年1月に上昇が止まり、2009年2月にそこを打ち、-11.7%の損失となりました。

Portfolio Growth:資産額推移

「Portfolio Growth」では、上記比率で10,000ドルからスタートしたと仮定した場合のシミュレーション結果(資産額推移)が表示されています。価格データがない期間は、表示されません。[キャプチャ]当初横ばいだったものが、2008年後半から大きく下落し、その後、2009年8月にようやく回復しています。その後は、緩和相場のおかげもあり、右肩上がりで推移しています。

Annual Returns:年別リターン

「Annual Returns」では、上記比率で保有した場合の年間のリターンが表示されます。やはりリーマンショックのあった2008年は大きくマイナスですね。

ポートフォリオの最適化とシミュレーションの注意点

今回のVYM、VGT、BNDによるリスクパリティPFは、ところどころに落ち込みはあるものの、右肩上がりで推移してきたポートフォリオのようです。とはいえ、あくまで過去データを使った最適化結果に基づく、シミュレーションですので、将来的に同様の動きになることはありえません。

たとえシミュレーションで非常に成績の良い組み合わせを見つけたところで、後付けの結果でしか無いことは頭に入れておく必要があります。

それを理解した上で、未知のデータに対して備える(心の準備をする)のであれば、例えば、2008年から2013年を最適化期間、2014年から2019年をシミュレーション期間にするなど、最適化期間で使っていないデータでシミュレーションをする工夫をしても良いかもしれません。

3. 1.のPF総額に2.の構成比率を掛けて各銘柄の目標額を算出する。

既存資産500万円、今後1年間の追加投資額120万円(NISA枠フル活用)と仮定すると、1年後に投資額は620万円になります。この620万円に2.で算出したVYM13.61%、VGT11.40%、BND74.99%の比率を掛けると、以下のようになります。これが1年後の各銘柄に対する投資額になります。

1年後の投資額620万円の内訳

  • VYM:84万円
  • VGT:71万円
  • BND:465万円

4. 現在の各銘柄の保有額と目標額の差額をそれぞれ算出する。

現状のポートフォリオが500万円と仮定すると、現状の各銘柄の保有額は、いかのようになります。

現状500万円の内訳

  • VGT:225万円(45%)
  • VYM:140万円(28%)
  • BND:135万円(27%)

5. 目標額と期間から取引計画を立てる。

上記の通り、最終的な投資額合計と現状の差額は、以下のようになりました。これを1年間掛けて調整していきます。

1年間で調整が必要な金額

  • VGT:-141万円(=84 - 225)
  • VYM:-69万円(=71 - 140)
  • BND:+330万円(=465 - 135) 月1回の取引を想定して、1年間=12回で調整することを考えます。単純に12で割ります。また、1年間で120万円の追加投資分があるため、円からドルへの両替も必要になります。

毎月の取引計画

  • 毎月10万円分ドルに両替(ドル購入)
  • VGT:117,500円分ずつ売却
  • VYM:57,500円分ずつ売却
  • BND:275,000円分ずつ購入

現状、BNDの比率がかなり低いので、VYM、VGTは売却を進め、売却して確保した資金と追加投資額をすべてBNDに投入する必要がありそうです。

6. 取引計画に沿って取引する。

あとは、5.で決めた取引計画に沿って、粛々と取引するだけです。カレンダーに登録したり、積立設定などで自動化したりと様々な方法がありますが、自分でやると迷いも出てくるので、証券会社のサービスで自動化することをおすすめします。

私が使っているSBI証券と住信SBIネット銀行の場合、円からドルへの両替は住信SBIネット銀行の外貨積立サービスを利用し、ETFの定期購入はSBI証券の定期買付サービスを使っています。

現状、ETFの定期的な売却と住信SBIネット銀行からSBI証券へのドルの移動を自動化出来るサービスは無いようなので、カレンダー登録して手動で実施しています。

さいごに

一通り、リスク調整のためのポートフォリオ再構築に向けた準備が整いました。今回のポートフォリオ見直しは、これまでのような上昇一辺倒な相場ではないはず、という自分の相場観に基づいて、リスク寄与度を均等化するリスクパリティの考え方を採用しました。

上昇が続くようであれば、利益を取り逃がすことになりますが、そのときはまた考えを改めて、次のチャンスを狙うだけです。

今回書いたインデックス投資の他にも先物、オプション、FXもやっていますが、それはまた別の機会に。ありがとうございました。

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